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スペクトル拡散通信システム |
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横山 光雄 著 |
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16,000円
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4-87653-005-X C3055 |
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スペクトル拡散通信システムは、周波数の有効利用上極めて有望な通信方式であり、秘話・秘匿性に優れておりかつ周波数利用効率が高いことから、次世代のデジタル通信方式として注目を集めている。本書はスペクトル拡散通信システムの重要な機能であるCDMA(符号分割多元接続)の他、TDMA(時分割多元接続)等のスペクトル拡散通信システムの設計に必要となる基礎理論について詳細に解説を行っている。その全体像を理解するために必要となる基本技術とその応用知識を得るための広範な技術について体系的に詳細な解説を行った最初の技術専門書として高い評価を確立。本書は、基礎から応用面に至る幅広い技術分野の技術者にとっての必読書となっている。
スペクトル拡散通信システムは,沢山の技術の集大成である。本書は,ベースバンドから伝搬の影響まで,特別な予備知識なしでスペクトル拡散に必要な知識が一通り学べるようにしてあるのが特徴である。スペクトル拡散通信技術は、ディジタル通信の原理が基本になって構成されたシステムである。そのため、十分なディジタル通信技術の基礎が必要であるが、本書では、前半で予備知識としてそれらの知識を系統的に学べる構成をとっている。そのため、スペクトル拡散技術に限定せず、ディジタル通信方式を学ぶための参考書としても十分な機能を果たしている。本書の類の専門書は、記述が直接核心部分に入るため、本書の内容を章毎に記述すると以下の通りである。
本書の構成
第1章は序論で,「スペクトル拡散通信の興隆の背景」を述べている。
第2章では,スペクトル拡散通信システムとは,どのようなものか,そのシステムの特長や欠点とは何か,具体的にどのようなシステム構成をとるのか,更に,どのような分野に適用されるのかなど,「スペクトル拡散に関する概要」を紹介している.個々の構成技術については,第4章以降で詳細に説明するので,それらの役割を理解するための章である。
第3章では,本書の全体を通して必要となる知識を整理してある。通信の勉強をするのに必要かくべからざる事項を総まとめした「基礎理論」の章である.本章では,時間の関数と周波数の関数の橋渡しをするフーリエ変換,線形系に入出力する信号の解析法,ランダムに変化する信号の統計的な処理や雑音に埋もれた信号の検出に関する事項,並びにフィルタ理論(最適線形フィルタ,整合フィルタなど)について学ぶ。
第4章は,情報を伝達するための「変復調理論と誤り訂正」についてまとめてある。始めに,アナログ信号を伝送するための周波数(または,位相)変調について説明する。次に,ディジタル信号の伝送に関する変復調理論について述べる。ここでは,アナログ音声信号をディジタル信号に変換するためのA-D変換,パルス伝送に関するシステム設計法,そして,パルス伝送に適した変復調方式としてPKSやFSKを説明した後,最近注目を集めているスペクトル集中性の良い,MSK, TMS, GMSKなどについて解説する。最後に,帯域と電力の互換の関係や,通信容量と符号化について触れ,ディジタル信号の伝送品質の向上に欠かせない誤り訂正符号について述べている。ブロック符号,巡回符号,BCH符号,直交符号,畳込み符号などが紹介されている。
第5章は,「スペクトル拡散システムに必要不可欠な同期技術」を扱っている.同期技術前半の基礎として,位相同期ループを詳しく論じた後,搬送波が抑圧されたシステムにおける搬送波同期回路として,N乗ループやコスタスループ回路を説明する。これらの準備を得手,直接スペクトル拡散システムのPN系列の同期回路である,代表的な遅延ロックループや震動回路の構成,動作特性,性能解析を行っている。周波数ホッピングスペクトル拡散システム用の同期回路についても説明を行っている。同期獲得には,時間同期と周波数同期の両方が必要なので,サーチにより初期獲得を行うための手法や,同期引き込みの解析法なども詳しく紹介している。
第6章は,「スペクトル拡散に使用するための符号」について述べたもので,古くから使用実績のあるPN系列,それを更に発展させた形のGold符号について解説している。数学的な発生メカニズム,フィードバックシフトレジスタによるハード構成の符号発生器,性質,電力スペクトル,相関特性,異種符号間との相互相関特性,符号発生のデータなどを掲載している。更に,周波数ホッピングに使用される符号について,発生法や性質,特徴などを紹介している。
第7章は,「スペクトル拡散システムが実際に利用される通信路の性質」を学ぶ。通信路には,衛星通信のように見通しでほぼ理想に近いガウス雑音通信路に近似できるものもあれば,陸上移動通信路のように多重通信路によるフェージングの発生する通信路もある。本章では,これらの通信路の性質を学んだ後,通信路のモデル化を行う。更に,回線のレベルダイヤや,CN比算出法を学んで,スペクトル拡散通信システムの準備を終えることにする。
第8章は、第7章までに学んだ知識を総合的に活用して、「直接スペクトル拡散通信システムを構成する場合の諸問題」について論じている。基本システムの構成、SN比と誤り率、多元接続における比較検討、帯域制限による特性劣化、周波数同期による同期獲得時間の短縮法など、加法性ガウス雑音通信路を対象とした特性を学ぶ。更に、フェージング通信路への適応に関する問題を論じ、RAKE受信機の解析結果を紹介し、陸上移動通信における多元接続特性を示す。直接スペクトル拡散システムは、高精度の時間分解能を所持しているので、その機能を利用した距離や距離変化率の測定法の原理を説明し、その応用例として時刻同期に利用されているシステムや世界的な測距システムであるGPSを紹介する。その後、実用化されている直接スペクトル拡散通信システムを幾つか紹介して直接スペクトル拡散システムの章を終了する。
第9章は、本書の最後の章として、「周波数ホッピングスペクトル拡散システム」に関する事項を扱う。システムの構成や基本特性などの概要を学んだ後、これまでに提案された陸上移動体に適用するFH/DPSKとFH/MFSKシステムの解析結果を紹介する。これらのシステムは机上検討なので、最後に電波研究所で開発したFH装置による室内および都市内走行実験結果を紹介し、実際のFHシステムの性能を紹介する。
本書は、CDMAやGPS等のスペクトル拡散システムを応用したシステムの開発に携わる技術者、通信用の半導体等の設計・開発技術者やテレコミュニケーション技術者にとっての必読書となっている。 |
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