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ディジタル信号処理
John G. Proakis 他著
Dimitris G. Manolakis 他著
浜田 望 他訳
2巻セット 24,000円
A5 1306頁
4-87653-038-6 C3055
今日、信号処理に関するディジタル技術が様々な分野で広く行われるようになり、ディジタル信号処理は工学基礎理論としての重要性が認識されつつある。本書は、Northeastern 大学John G. Proakis 教授とBoston 大学Dimitris G. Manolakis 教授による信号処理に関するテキストである。ここには1 次元信号処理に関して必要とされる事項のほぼ全体像が述べられていると考えても良い充実した内容である。本書は初版発行から、すでに第3 版を発行するまでになっていることからも優れたテキストとして定評を得ていることが推測される。本書を手にされて、いずれかの章を一読されれば、いかに教育的かつ懇切丁寧な説明がなされたテキストであるかがすぐに明らかになるであ
ろう。

著者らがまえがきで述べているように、本書は著者らが実際に教育にたずさわっている学部・大学院における講義のテキストとして準備されたものにもとづいている。一応電気工学、計算機科学の学生や研究者を対象として書かれているが、最近のディジタル技術の広範な分野での利用を考えれば、例えば前半の内容などは上記専攻以外の学生にも教授すべきと思われる。一方、すでに実務に従事している技術者にとって、ますます高度化していくディジタル信号処理技術の体得にとって、本書のようなしっかりとした内容を学習する事が必要であるし、関連部署にハンドブックのように備えておきたい書物である。本書を読み進むに必要な数学的な道具としては、理工学系大学学部あるいは高等専門学校等における初学年の科目、微積分学、線形代数学、ラプラス変換等でカバーできるであろう。なお、最後の2 つの章では確率過程についての基礎事項が前提とされることもあるが、それらは巻末の付録として簡潔にまとめられている。

本書の内容の特徴は、ディジタル信号処理に関する理論とその実際的な応用についてバランスをとった内容になっていることである。また、各章末に多くの問題を載せられていて、さらに良く内容を理解できるように配慮されていることである。本書の著者の一人であるProakis 教授の専門分野は通信工学でもあり、別の著書として「ディジタルコミュニケーションDigital Communication」を出版されている。このことから信号処理のきわめて大きな応用分野である通信・情報メディア技術に従事する技術者、学生諸君に両書を合わせて読まれることを勧める。

欧米の大学の教育では基本となる主要科目を十分な時間をかけて行われる。しかも本書に代表されるように教育的な配慮のなされた大部のテキストをもとに行われることはよく知られている。ボーダレス時代に、このようなしっかりした基本を身につけた技術者として開発・研究に携わり技術競争を戦い、あるいは共同で開発を行ために本テキストのような統一されたテキストによる自己啓発は有意義である。


本書の構成

第1 章では信号処理全般にわたる説明とアナログ信号からディジタル信号への変換等の基本操作について述べている。信号の分類、周波数概念、サンプリング過程についての詳しい説明などである。ここではアナログ−ディジタル信号間の変換の一般的を述べているが、その詳細は第9 章で述べられている。

第2 章と第3 章は線形離散時間システムについての部分で、すでに線形システム理論についての学習を終えられた方には簡単な復習の意味で重要な事項の確認をされれば良い。

第2 章は時間域における線形時不変(シフト不変)離散時間システムと離散時間信号の解析について述べられている。コンボリューション演算の導入、有限インパルス応答(FIR:FiniteImpulseResponse)システムと無限インパルス応答(IIR:InfiniteImpulse Response)システムについて触れ、線形時不変システムの解法、離散時間相関関数について述べている。

第3 章はz 変換の導入と、逆z 変換を行う方法を与え、それがどのように線形時間不変システムの解析に適用されるかについて示している。システムの重要な性質である、因果性、安定性などをz 変換領域の特性と関連づけている。

第4 章から第6 章までは信号やシステムの周波数解析として、フーリエ変換、離散フーリエ変換、高速フーリエ変換について述べられている。すなわち、周波数特性の理論と計算法について詳しい紹介がなされている。

第4 章は周波数領域における信号とシステムの解析を扱っている。まず連続時間ならびに離散時間信号の両者に対するフーリエ級数とフーリエ変換を紹介し、線形時間不変(LTI)システムが周波数応答関数によって特性が示され、それによって周期的信号や非周期的信号に対する応答が決定される方法が与えられる。さらに、重要な離散時間システムの例として、共振器、ノッチフィルタ、くし形フィルタ、全域通過フィルタ、発振器などについて述べている。また、簡単なFIR、IIR フィルタの設計例を示している。

第5 章では、DFT とその応用について取り扱っている。DFTを用いてフィルタリングを行う2 つの方法やDFT を用いた信号の周波数解析について述べている。

第6 章はDFT の高速計算法に焦点が当てられている。ここでは基数2、基数4 とスプリット基数の高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムの紹介、コンボリューションと相関関数の計算へのFFT アルゴリズムの応用について述べている。なお、ゲルツェル(Goertzel)アルゴリズムとチャープz 変換が線形フィルタを用いたDFT の計算法も説明されている。以上の6 つの章がディジタル信号処理の基礎的な部分に相当すると思われる。

以下の7、8 章は信号処理システムのデザインについて述べられている。特に、7 章では実現問題を、8 章ではフィルタ近似問題が扱われている。フィルタリングが信号処理システムの基本的な処理であることから実際問題においても重要な課題が扱われている。

第7 章はIIR フィルタとFIR フィルタの実現問題を説明している。扱われている実現は直接形、縦続形、並列形、ラティス、ラティス・ラダー形等である。この章では状態変数解析と離散時間システムの構造、FIR ならびにIIR システムのディジタル回路実現における量子化誤差についての検討もなされて
いる。

第8 章ではFIR、IIR ディジタルフィルタの設計手法について扱っている。設計法として、離散時間領域での直接設計法とアナログフィルタからディジタルフィルタへの変換を用いる方法の両者について述べている。

第9 章は連続時間信号のサンプリングとそれらのサンプル値からの復元法に焦点をあてている。この章では連続時間帯域通過信号のサンプリング定理を導き、A / D 変換、D / A 変換技術とオーバーサンプリングA / D、D / A 変換も扱っている。

第10 章ではサンプリングレート変換とマルチレートディジタル信号処理を扱っている。また、整数比のデシメーション(間引き)とインターポーレーション(補間)や、任意変換比のサンプリングレート変換の方法を示している。マルチレート信号の応用として、ディジタフィルタ設計法、音声信号のサブバンド符号化、トランスマルチプレクシング、オーバーサンプリングA / D、D / A 変換等についても説明している。近年、マルチレート信号処理が様々な応用においても関心を呼んでおり、その意味でこのような章が設けられてことは有意義である。

最後の2 つの章である11、12 章は信号のモデリングについて扱われている。音声の解析や合成に応用される線形予測法、システムと信号のモデリングとしてのパワースペクトル解析について説明がなされている。これらの章の内容は信号の統計的な取り扱いであり、信号処理以外の実用面でも重要である。伝送システムの同定、アレイ信号処理など先端的な分野で必要とされる手法について手際よく説明が加えられている。

第11 章は線形予測法と最適線形フィルタについて記述している。この章では、正規方程式を解くためのレビンソン−ダービ(Levinson-Durbin)アルゴリズムとシュア(Schur)アルゴリズムや、AR ラティスフィルタ、ARMA ラティス・ラダーフィルタも同様に含まれている。

第12 章ではパワースペクトル推定を扱っている。ここでは、ノンパラメトリックな方法と、モデルに基づく(パラメトリックな)方法の両方をカバーしている。また、MUSIC やESPRIT と呼ばれる方法を含む固有値分解に基づく方法も記述されている。

本書の最後に付録としてランダム信号についてのまとめがなされており、本書を読むために必要な確率信号・システムについての簡潔な説明が与えられている。
 
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