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電磁気学
中川 恭彦 著
2,800円
A5 288頁
4-87653-019-X C3055
情報化社会の進歩は著しく,マルチメディア機器やコンピュータ,無線通信,有線通信及び光通信などの発展は目覚ましいものがある.これらにおいては,信号処理のほとんどがディジタル信号を扱っている.しかも高速大容量の処理を行うため,使用する周波数は段々と高周波になり,数百MHz から数GHz帯になってきた.これまでディジタル信号は単に0,1の電気パルスとして集中定数回路的に扱われていた.しかし,いよいよ高周波になってくると基板内を電磁波として伝搬することになり,波動的扱いをしなければ素子の設計などが出来なくなってきた.また,携帯電話やインターネットに象徴される情報通信は光波や電磁波を使用している.このように,情報化社会の基盤造りには,マクスウェルの方程式に基づく「電磁気学」の基礎知識が必要であり,改めて「電磁気学」の重要性が見直されてきた.

 電磁気学は,実世界では体験できない目に見えない抽象的な物理現象である.このような形而上学的世界を,天才的先人たちが約200年かかって完成させた学問大系である.さらに,電磁波の発見からもすでに100年余を過ぎている.この電磁気学は学問的に完成された非常にきれいな完備性を持っている.電磁気学の美しさは,「マクスウェルの方程式」に集約されており,電磁気学を理解することは,「マクスウェルの方程式を理解し,自由に使えるようにする」ことであると言っても過言ではない.

 電磁気学を学ぶとき,その学習法は二通りあると考える.第一は,大学生2,3年生レベルの初心者が学ぶとき理解しやすい方法である.真空中の電荷間に働くクーロン力を電気現象の出発点として,この力の伝達する勢力圏を「場,界」として現象を具象化し,理論を展開し,静電界,静磁界,電磁誘導,マクスウェルの方程式へと系統立てていくいわば電磁気学の歴史に沿って学ぶ方法である.

第二は,一度電磁気学基礎を学んだ者が,一般的および体系的に電磁気学を学び,その全体像を具現化するのに適しているマクスウェルの方程式を出発点として,個々の問題に発展する学び方である.

 本書は,大学工学部電気系学科の学生を主たる対象とするため,クーロンの法則を出発点とする第一の学習法に沿って書かれている.


本書の構成

本書の構成は、以下の通りである:
  1.真空中の静電界
  2.誘電体
  3.電流と電荷保存則
  4.電流と静磁界
  5.磁性体
  6.電磁誘導
  7.マクスウエルの方程式と電磁波
  付録 ベクトル解析
また、次の3点が本書の特徴である.


本書の特徴

?目に見えない物理現象をいかにして分かり易く表現するかに工夫を凝らした.数式の力とコンピュータの力で目に見える形に具現できるよう工夫されている.数多くの「例題」とその詳細な解答を本文中の随所に収め,本文の解説に加えて,図解により視覚的に「物理現象」をわかり易く説明している.

?電磁気学はきれいな数式で表現され,しかも全体が数学的に完備された美しい学問である.電磁気学の本質は“物理現象”であり,この物理学を理解する方法として,基本方程式の理解とその解の意味をつかむことが大事である.

従って,初心者に向く学習方法として,「電磁気学は数学だ,まずは習うより慣れろ」であると本書の著者は考えている.そのため,各章末に「演習問題」を多数収め,自らが問題を解く訓練をする構成としてある.

?マクスウェルの方程式を自由に使いこなし、電磁波の解析が出来るようにすることが大事であると考え、誘電体や磁性体の物性は,非常に複雑で内容も多岐にわたっているため記述は極力さけ他書に委ねることとした.また,工学的には重要であるが数式が余りに複雑なインダクタンスや幾何学的平均距離などの計算は基本だけに留めた。


本書の内容

各章の内容は,以下の通りである.

第1章 真空中の静電界

 電磁気学の基本法則である「クーロンの法則」について,その考え方,その法則の持つ理論的発展性,具体的計算例が示せれている.ついで,クーロン力の及ぼす「場」をもとに,「電界」を定義しその求め方や表現方法について記述されている.さらに理論は展開され,電界を基に「電束密度」や「電気力線」という概念が導入され,マクスウェルの方程式の一つ「ガウスの法則(発散定理)」へと導かれていく.

次に,「電位」,「ポアソンの方程式およびラプラスの方程式」が書かれている.電位と電界の関係,電界中に置かれた「導体系」を静電界の境界条件とするラプラスあるいはポアソン微分方程式の解法,図による理解を経て,実用上有用な「静電容量,コンデンサ」述べている.ここでは,「電気エネルギー」と言う考えと,それを蓄えるという工学的利用の観点からも説明されている.静電界を集中回路的にとらえ一つの素子(コンデンサ)に置き換える.これは電気回路の基本物理量の一つである. 

第2章 誘電体

 この章では,物質中における静電界について,「分極」「誘電体間中のガウスの法則」「異種誘電体間の境界条件」について述べられている.巨視的な意味で我々が電荷や電流として考えているのは,金属導体中における自由電子であり,「真電荷」と言われる.この真電荷によって造られる電界は,物質内の原子または分子を「分極」させ「電気双極子」を形成する.この電気双極子がさらに電界を誘起し,はじめの電界に重ね合わされる.このような取り扱いを巨視的に整理していくことによって,「誘電体」が定義された.誘電体の物性は非常に複雑で内容も多岐にわたっている.「誘電体の物性」を正確に,詳細に学ぶことは大切ではあるが,体系化された電磁気学を理解する上では少し遠回りになるので,この本では記述されていない.それに代わり,物質の分極電荷の大きさを表す示数として,「誘電率」が導入され,「誘電体中のガウスの法則」が導出され,真空中の静電界と同様な扱いが可能となった.また,実用上有用なコンデンサ容量が理論的に求められ,その具体例も示されている.

 なお,この章は真空中に限った電磁気学を学ぶ場合,特に電磁波を早く体得したい場合には,第5章の「磁性体」と同様に学習を省いても良い構成になっている.

第3章 電流と電荷保存則

 電荷が移動することによって電流が生成される.電流が生成されると,電荷の衝突によるジュール熱が発生し電気的エネルギーを熱に変える.この電流の流れを規定するものは電気回路で言う「オームの法則」である.

 第4章で述べられているように「磁気」の基は電流であるとするのが現代電磁気学の基本である.どんな物理変化に対しても,電荷は生成もされなければ消滅もしない.もし,電荷密度が時間変動するなら「電荷の保存則」または「連続の方程式」が成り立つ.この電荷保存則は,マクスウェルによって導入された第二の電流「変位電流」という考え方の基本になっており,マクスウェルの方程式の一つへと理論が展開された.ここでは,電流の定義を方程式で表現することを学ぶ. 

第4章 電流と静磁界

 この章は「電流の磁気作用」を基本に理論が展開されている.定常電流が流れている導体線を2本近づけると導体間に力が働く.さらに片方を永久磁石に置き換えても同様な力が作用することが発見された.これにより,電流と磁気作用とは等価であることが確認された.電荷が静止していれば静電界を,電荷が移動していれば静磁界を生成することが分かったのである.電流が磁気の基であるとする理論が現代電磁気学の立場である.この章では,理解しやすいように,実験的に求められた「アンペアの法則」を最初に学び,磁束密度の性質,さらに磁界の「ベクトルポテンシャル」の導出,そしていろいろな形状の電流が作る磁界を求めるのに大変便利な「ビオ・サバールの法則」について,記述されており,具体的な形状について例題も豊富である.

第5章 磁性体

 原子は核の廻りの電子の公転運動によって微小な電流のループが形成され,その電流による磁気を帯びていると考えて,「磁気モーメント」を導入した.ミクロな磁気モーメントの集合として磁性体を巨視的にながめ,「磁化」を定義した.磁化の大きな物体を磁性体と呼ぶ.磁性体の物性を正確に,詳細に学ぶことは大切ではあるが,体系化された電磁気学を理解する上では少し遠回りになるので,この本では記述されていない.それに代わり,磁性体内の磁場強度を導入し,磁性体内においても「アンペア法則」が適用できるように巨視的な「透磁率」が定義されている.磁気量として「磁束」も導入され,さらに異種磁性体の境界における磁気的境界条件も記述されている.なお,この章は真空中に限った電磁気学を学ぶ場合,特に電磁波を早く体得したい場合には,第2章の「誘電体」と同様に学習を省いても良い構成になっている.

第6章 電磁誘導

 この章には,有名な「ファラデーの電磁誘導の法則」が中心に記述されている.それまで電界と磁界との間には直接の関連はなかったが,1831年ファラデーによって電磁気学上画期的な法則が発見された.閉回路内の磁界が時間的に変化することによって電界が発生すること発見した.これは電界と磁界との結合を示す重要な法則であり,電磁波の存在の原点であると言っても過言ではない.ファラデーの電磁誘導法則はきれいな微分形式で表現され,マクスウェルの方程式の重要な基本式の一つになっている.また,電磁誘導作用に関連した「自己誘導係数」と「相互誘導係数」が導入され,磁気エネルギーの表現が記述されている.磁界を集中回路に置き換えて電気回路的に扱うために,「インダクタンス」を定義した.これは電気回路の基本素子の一つである.

第7章 マクスウェルの方程式と電磁波

 この章は,マクスウェルの四つの基本方程式が記述されている.「ファラデーの法則」の逆過程すなわち,電界が時間的に変化すると磁界が発生するという「アンペア・マクスウェルの法則」が導かれた歴史的大発見について記述されている.第3章で記述されている伝導電流とは異なる「変位電流」の大発見によって電磁波の存在が導びかれたのである.マクスウェルの方程式は電界と磁界が結合した方程式で,8個の物理量を未知数とする連立微分方程式である.これらの方程式を解析的に解き「波動方程式を導き」、ついで「平面電磁波」の複素数解と伝搬の様子,波動のエネルギーとはなにかなどが記述されている.電磁波の理解とそれを自由に使いこなせる実力が要求されているが、それに答える記述となっている。

付録 ベクトル解析

 電磁気学を体系的に学習する上で必要なベクトル解析の基礎が記述されている.

ベクトルの四則演算,ベクトルの微分積分,ベクトルの発散と回転,スカラ界の勾配について,数学の公式集的に書かれている.また,電磁界の応用問題を解く上で必要な「円筒座標」と「球座標」も参考として記述されている.
 
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