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Mathematica3.0によるカオス工学への応用
鈴木 イクオ 著
6,600円
A5 382頁
4-87653-021-1 C3050
 最近カオスとか、複雑系という言葉が巷に氾濫している。カタストロフィー理論、フラクタル理論などを含めて、大変興味深く応用も非常に盛んになってきた。非線形現象などに始まって、カオスニューラルネットなどの問題が研究の中心となってきている。物理現象のなかで、非線形な問題は大変興味深いものであり、カオスそのものでも、理論から応用まで多くの話題が存在している。特に情報通信の分野では、カオスで暗号の問題に関係したり、電子回路の非線形性やニューラルネットでカオスを導入して精度と計算時間を短縮させたり、微分方程式を解いたりと実に盛り沢山である。

 本書の中心は、興味あるカオスの工学への応用問題をMathematica で実際に解くことである。本書の構成は、全体を2つの部にわけ、第一部では「カオスの基礎を数学的に論じ」、第二部で「カオスの応用問題」を取り上げている。本書は、読者がUNIXでも, WindowsでもMac でも実際にキーをたたいてMathematicaで例題を実行されることを前提として記述し、Windows版とMac版のMathematica3.0のプログラムソフトを用意し、読者の便に供している。

 本書では最新版のMathematica 3.0版で例題プログラムの作成とその計算を実行しているが、Mathematica2.2でも利用できるように注意が払われている。


本書の内容

物理現象の中で非線形な問題は大変興味深いものがある.最近は特にカオス現象が大いに研究されている.カオスは基礎的な理論から応用まで数多くの問題や話題が山積している.みじかな情報通信の分野でも,カオスによる秘匿通信や,ニューラルネットの問題などがあり,制御ではカオスによる安定化の議論がある.

 本書はこれらの問題を「基礎編」と「応用編」の2部に分けて記述している.「基礎編」ではカオスの発展の歴史や数学的な基礎を詳述した.基礎編を精読すればいろいろなカオスの問題に対して,数学的に議論するノーハウが会得できるようになっている.「応用編」では電気回路とカオス,制御系のカオス,化学と生物におけるカオスを取り上げている.

本書が他のカオスの書物と異なる点は,単なるカオスの解説書ではなく,実際に数学ソフトであるMathematicaを用いて,実際に例題を解くうちに理解が深まり,実際にカオスの研究者になれるよう配慮したことにある.また各章には,コーヒーブレイクをもうけカオスに関連するエピソードを取り上げてアクセントとなっている.

第?部 基礎編の第1章ではMathematicaについて記述し,実際にMathematica を使うさいの手続きと注意点を詳しく述べた.Mathematicaの作者であるウルフラムについてのエピソードをまじえ,Mathematicaの起動と実行,終了の仕方にふれ,主な演算命令やおちいりやすいエラーについて記述している.

第2章ではカオスとは何かについて簡単にふれでたらめとカオスの違いや,カオスはどのように定義されてきたかを歴史的に振り返って記述した.実際に乱数をフーリエ変換したものや,周期関数のフーリエ変換等について,カオスを示すものとの差について示した.そこで時系列の求め方と,初期値鋭敏性について実例を示して論じた.最後にカオスの最初に用いられた論文や,リーとヨークの話題を取り上げた.

第3章ではフーリエ変換を取り上げカオスがフーリエ変換のパワースペクトルにどのように現れるかを示した.最初にフーリエ変換について数学的な基礎を復習し,Mathematicaでの計算を示した.例題としてカオスを示す例を取り上げ,電気回路でおなじみのファンデルポール方程式やダフィング方程式を記述している.

第4章ではカオスの数学的基礎として線形振動,非線形振動の位相平面での軌道の表現を示し,不動点や周期点,関数族についてふれた.線形振動における位相平面での面積の保存性など,物理的な概念を正確に論じた.また,写像の繰り返しなどの興味ある問題も取り上げ,吸引的な不動点の様子をMathematica で計算し視覚的に示し理解を容易にした.周期点や分岐を取り上げ,ファインゲンバウム定数を示してある.

第5章では位相平面での特別な表現としてポアンカレー断面を詳しく述べた.カオスについて理解を深めるときにこのポアンカレー断面の記述方法をマスターすることは不可欠である.位相空間での形状としてのトーラスの意味やアトラクターなどについて詳しく論じた.ポアンカレー断面をMathematica で描く方法は本書において簡単に示されたものである.

第6章では散逸系カオスとして特にロジスティック写像を詳しく述べ,リアプノフ指数の計算方法を詳しく示した.リアプノフ指数を求めることは,カオスの判定において第一義的に最重要であるが,本書ではじめてMathematicaでそれを求めることが簡単であることを示した.このプログラムは多くの場合に応用がきき,大変有用なものである.

第7章でアトラクターを取り上げ,有名なレスラーモデル,エノン写像,ローレンツモデル,ダフィング振動系とウエダのアトラクターを詳述した.アトラクターを分類し,不動点,トーラス,周期点についてふれた.アトラクターには有名なものがあり,それらについて取り上げるとともに,位相空間での自己相似性などのフラクタル性などについて詳しく論じた.またリターンマップの求め方はMathematicaで簡単に計算できること,またその例題が応用のきくものであることを示した.このプログラムは大変価値のあるものである.

第8章では悪魔の階段を取り上げ,カオスの特徴として重要な次元,ぱいこね変換,エントロピー,間欠性カオスなどを詳しく示した.悪魔の階段のなかで,アーノルドの猫の例をとりあげカオスが生じるための折畳みなどの操作について,Mathematicaで視覚的に示した.この章はカオスの本質的な部分を論じたもので,Mathematicaで理解を深めるのに容易になるように記述している.

第9章では基礎編のまとめとして計算の要項集としてある.

第?部の応用編では第10章で電気回路とカオスを取り上げ,非線形な電気回路を多くの例をあげて説明した.特にウエダのアトラクターはジャパニーズアトラクターとして世界的に示されたものであり,Mathematica でポアンカレー断面を求める方法について示した.また,ジョセフソン接合や,非線形な回路素子をもつ電気回路の例を取り上げて論じた.ダブルスクロールの例はMathematicaで簡単に計算できて,結果は美しい位相空間の図を与えている.

第11章では制御系におけるカオスを取り上げ,OGY法やPyragassの方法による系の安定化を取り上げた.制御における丸め誤差によるカオスの出現や,カオスを利用して,制御を安定化する最近の例を示している.

第12章では化学と生物におけるカオスとしてザボチンスキー反応などを取り上げた.最後に付録としてカオスやフラクタルを絵として楽しむ章としてある.

第I部 カオス基礎

第1章 Mathematicaについて
1.1 Mathematicaの歴史 1.2 Mathematicaの起動と終了 1.3 演算記号と数式 1.4 論理演算1.5 ヘルプ 1.6 パツケージ

第2章 カオス
2.1 はじめに 2.2 でたらめとカオス 2.3 初期値鋭敏性 2.4 カオスの歴史 2.5 リーとヨークの定理

第3章 フーリェ変換
3.1 フーリエ級数 3.2 有限フーリエ級数 3.3 連続フーリエ変換 3.4 例

第4章 数学的基礎
4.1 線形自由振動 4.2 位相空間 4.3 保存系と散逸系 4.4 周期点 4.4.1 不動点 4.4.2 周期点 4.5 関数族 4.5.1 2次関数族 4.5.2 分岐 4.6 分岐の型 

第5章 ボアンカレ断面
5.1 ポアンカレー断面の構成5.2 ポアンカレー断面の例5.2.1 周期解5.2.2 準周期解5.2.3 周波数同期5.3 再帰写像5.4 アトラクタ

第6章 散逸系カオス
6.1 ロジスティック方程式 6.1.1 ロジスティック写像 6.2 差分方程式一微分方程式の離散化6.3 リアブノフ指数 6.3.1 ベルヌイシフト 6.4 位相空間

第7章 アトラクタ
7.1 アトラクタアトラクタの分類 7.2 散逸系アトラクタ 7.3 レスラーモデル 7.4 エノン写像 7.5 ローレンツモデル 7.6 ダフィング振動系と上田のカオス 7.7 Birkoff-Shawのカオスアトラクター

第8章 悪魔の階段
8.1 カントール集合 8.2 次元 8.3 準周期性と位相同期 8.4 円写像 8.5 悪魔の階段 8.6 馬蹄形写像 8.7 パイこね変換 8.8 ヘテロクリニックな軌道 8.9 エントロピー  8.10 アーノルドのあわれな猫 8.11 フローケの理論 8.12 間欠性カオス8.13 カオスヘのシナリオ

第9章 基礎編まとめ
9.1 時系列、位相平面、パワースペクトル9.2 ポアンカレー写像 9.3 リアブノフ指数 9.4 不変測度 9.5 エントロピー 9.6 標準写像

第II部 カオス応用

第10章 電気回路とカオス
10.1 RC回路 10.2 RLC回路 10.3 非線形電気回路 10.3.1 自励振動 10.3.2 上田のアトラクタ 10.4 ダイオード回路のカオス 10.4.1 Doub1escro11 10.5 p−njunction 10.6 Josephson接合 10.7 強誘電体のカオス

第11章 制御系カオス
11.1 制御システム 11.2 ディジタル制御システム 11.3 丸め誤差のカオス 11.4 OGY法 11.5 Pyragassの方法 11.6 線形フィードバック制御 11.7 非線形フィードバック制御 11.8 カオス通信 11.9 Hogg-Hubermanモデル

第12章 化学と生物におけるカオス
12.1 生物の個体数 12.2 神経モデルのパルス応答 12.3 カオスニューロンモデル 12.4 化学反応 12.5 時計反応と振動反応

カオスコレクション A.1 2次元写像のカオス A.2 自己相似図形

 
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