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ディジタル画像処理 |
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Kenneth R. Castleman 著
斎藤 恒雄 訳 |
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24,000円 |
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A5 960頁 |
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4-87653-035-1 C3055 |
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本書の概要
本書は、ディジタル画像処理に関する基本的な事項について書かれており、3部構成で全体で22章からなる。
第I部は、第1章から第8章にわたって構成され、ディジタル画像処理に関する基本的な考え方、処理システムのソフトウェアも含めた構成要素、各要素を構成する素子(デバイス)さらには最も基本となる具体的な処理について記述されている。
第II部は、第9章から第15章までで、画像処理システムおよびアルゴリズムを構成するのに必要な数学的な側面について詳しく論述されており、第1章で導入されたいくつかの概念に対して数学的な根拠を与えている。
第III部は、第16章から第22章までで、第?部、第?部で述べてきた基本的な事項を用いて実際の応用、応用のための処理アルゴリズムについてより詳しい記述がなされている。
以下に各章ごとに内容について説明する。
本書の構成
第1章は、「緒論」で、本書の導入部となっている。科学、技術その他の様々な分野におけるディジタル画像処理の位置ずけや重要性について述べ、ディジタル画像処理システムの構成、画像のディジタル化の過程や処理の流れ、用いられる主な用語の定義などが説明されている。また、われわれが接している、あるいは物理的に得られるのは連続的なアナログ画像であり、これをディジタル化してコンピュータで処理するものがディジタル画像処理であり、処理結果は再びアナログ画像に変換して観察している。この点を十分に認識したうえでディジタル画像処理を考えなければならないことを強調している。
第2章は、「画像のディジタル化」に関することが述べられている。ディジタル化装置は、標本点の決定、走査、センサ、量子化器、出力画像の蓄積媒体の5つの要素から成り立っていることが説明され、実際のディジタル化装置の性能を決定する基本的な特性が示されている。次にディジタル化装置を構成する具体的な素子(デバイス)について述べられている。画像を読み込む光センサについては、光電子増倍管のような電子管や光ダイオード、光トランジスタなどの半導体素子に関する解説があり、走査方式としては機械的なものと電子的なものがあることが説明されている。同じく画像を読み込む固体カメラとして光ダイオードアレイ、電荷結合素子(CCD),電荷注入素子(CID)についてその構造や特性が説明されている。フィルムに撮影された画像の読み込みについては、フィルムの感光特性、分解能が説明されている。
第3章は、「画像の表示と表示法」に関するものである。画像の表示は一連のディジタル画像処理の流れの最後の部分に相当するもので、表示装置に要求される特性や歪みの補正や雑音、表示する画像を構成している各点の特性と全体の特性などが議論されている。普通に用いられているブラウン管(CRT)のみならず永久的な保存のための各種のプリンターについても説明されている。
第4章は、「画像処理ソフトウェア」について述べられている。画像データのフォーマットから始まりメニュー方式、GUIなどのユーザインターフェース、ソフトウェアの開発の過程、構造化によるプログラミング、オブジェクト指向のプログラミングなどが説明されている。また、画像処理ソフトウェアの具備すべき条件などが挙げられている。
第5章においては、「グレイレベルのヒストグラムに基づく最も基本的な画像処理」について述べられている。しきい値処理によって得られる領域関数との関連でヒストグラムの正式な定義がまず述べられている。カラー画像のようなマルチスペクトル画像では、それぞれのスペクトルでのヒストグラムの組み合わせを解析することによって有用な情報が得られることを例を挙げて示してある。ヒストグラムを解析することによって画像の持つかなりの情報や性質を把握することができることが示されている。
第6章では、「単一の画素に作用する操作に基づく処理」について述べられている。画素に対する操作の基本はグレイスケールの状況を変化させることであり、センサの光の強さに対する非線形性の補正、コントラストの先鋭化、表示装置の特性の補正などに応用されている。これの問題を図を用いて分かりやすく説明されている。
第7章では、「代数的な操作に基づく処理」について述べられている。代数的操作に基づく処理とは、2つの画像の画素毎の和、差、積あるいは商を求めることによる処理である。同じ画像を多数加算することによって重畳しているランダム雑音を軽減できること、わずかにずれた画像の差をとることにより微分画像が得られること、2枚の画像の差をとることによって背景を取り除くことができ、また動いている物体を検出することができる。その他のも2枚の画像の積をとることによりある部分を隠してしまったり、また画像の間の割り算を行うことにより色やスペクトル情報の抽出に有用であることを述べている。
第8章は、「幾何学的な操作による処理」に関するものである。幾何学的操作の基本は、画素の位置の幾何学的変換とそれに伴うグレイレベルの内挿による処理である。その応用としては画像を撮影するときに受けた幾何学的な歪みの補正、特に地図の作製の場合、あるいは人工衛星から天体の写真をとる際の歪みの補正についての例が述べられている。
以上が第?部であり、ごく基本的な画像処理について概説されている。以下の第9章から第15章までが第?部を構成する。
第9章では、「線形システム理論の基本」について述べている。まず、線形システムの定義、線形システムの応答特性の基本となる畳み込みについて、1次元と2次元、連続系と離散系の場合について記述されている。その他、インパルス関数の特性やフィルタについての簡単な説明がされている。
第10章は、「フーリェ変換」に関する記述である。フーリェ変換は前章の線形システム論と共に画像処理理論の根幹をなすものである。まず、連続系と離散系に対するフーリェ変換の定義およびその性質が説明されている。さらに前述の線形システムの応答特性にフーリェ変換を応用する問題や2次元フーリェ変換の画像への応用がのべられている。また、相関関数やパワースペクトルについて簡単に触れられている。
第11章は、「フィルタ設計」に関することである。フィルタの基本についての記述に引き続いて、ランダム雑音に対するフィルタの応答や信号検出叉は推定のためのフィルタリングに関することが述べられている。最小自乗フィルタとしてのウィーナフィルタや信号検出のためのマッチドフィルタが説明されている。
これらのフィルタの信号検出や画像への応用が示されている。第12章は、「標本化されたデータの処理」についての説明である。これまではディジタル画像処理については主に数学モデルを用いた理論的な記述であったが、この章では実際に標本化されたデータを処理する際の問題点やその解決法について、より現実的な説明がされている。また、離散的なフィルタリングについても述べられている。
第13章は、「離散画像」、すなわちディジタル画像の線形変換に関する記述である。画像処理にはフーリェ変換を始めとして各種の変換が用いられるが、本章では変換の意味やよく用いられる変換として離散フーリェ変換、サイン、コサイン変換、ハートレ変換、アダマール変換、カルーネンレーベ変換等について説明されている。
第14章では最近注目されている「ウェーブレット変換」について論述されている。まず、信号の時間-周波数解析から始まり、連続的なウェーブレット変換の定義、2次元への拡張、フィルタバンクとしての解釈が述べられている。ついで離散ウェーブレット変換およびフィルタバンクの理論や多重解像度解析について述べられている。各種のウェーブレット変換やその計算法、サブバンド符号化など画像への応用が説明されている。
第15章は、「光学の基礎と光学的システムの解析」についてである。まず、レンズ系による結像系の説明から始まり、コヒーレント光、インコヒーレント光による結像、回折光による光学システムについて説明されている。この光学システムいおいて、コヒーレント光およびインコヒーレント光の場合の点広がり関数や光学的伝達関数について述べられ、光学システムとしての特性解析が行われている。
以上、第?部ではディジタル画像処理の理論的基礎あるいは処理アルゴリズムの基礎となるシステム理論についての論述であって、次に、具体的な応用に関する第?部を構成する第16章から第22章までの概要を説明する。
第16章は、「画像復元」に関することが述べられている。観測システムによって劣化した画像のフィルタによる画質改善に関するもので、ウィーナフィルタ、パワースペクトルを変形するもの、幾何平均フィルタ、拘束条件付最小自乗フィルタによるものが説明されている。また、超解像による復元についても述べられている。以上は劣化の機構が既知の場合であったが、一般的にはこれは未知である。そこで、劣化の機構も推定するためのシステム同定に関することが述べられており、さらに雑音に関することや実装する問題についても述べられている。
第17章は、「画像のデータ圧縮」に関することである。画像のデータ圧縮の基本が述べられた後に、情報の損失のないデータ圧縮を実現する符号化法と情報の損失を許容するデータ圧縮を行う符号化法が説明され、データ圧縮符号化の基礎となるレート歪み関数について述べられている。実際の符号化法については簡単に説明されている。
以下の第18章から第20章までは、パターン認識の基礎に関するものである。
第18章は、「画像の分割」すなわちセグメンテーションについて述べられている。まず、パターン認識についての簡単な説明や例が述べられている。セグメンテーションの手法としては、しきい値法、エッジ検出とその連結による方法、領域拡張法が説明されている。また、2値画像の処理についても各種の手法が説明されている。
第19章は、「対象の計測」に関することが述べられている。前章のセグメンテーションは、領域の分割や対象の物体の抽出を目的としたものであったが、本章では抽出された対象について各種の計測、例えば面積、周囲長、形状についての計測法に関することが述べられている。さらに、テクスチャ解析や曲線のあてはめなどについても説明されている。
第20章は、「分類と推定法」について述べられている。第18章で領域や対象が抽出され、第19章で抽出されたものの特徴が計測され、本章ではそれがどのカテゴリーに属するかを決定するもので、パターン認識の最終段階に関するものである。まず、相関や距離による分類や識別法が述べられ、ついで統計的推定法によるものが述べられている。すなわち、ベイズ推定によるもの、最尤推定法によるものが説明されている。さらに、ニューラルネットワークによる識別法について、その学習過程なども含めて論述されている。
第21章は、「カラー画像やマルチスペクトル画像」に関する処理が述べられている。人間の視覚系の色に対する感度や色彩の表現法がまず述べられている。カラー画像の画質改善処理、色の補正法、疑似カラー表示などカラー画像処理の基本的な事項について説明されている。
第22章は、「3次元画像処理」に関することが述べられている。まず、3次元コンピュータトモグラフィ(CT)やステレオ画像あるいは陰影をつけて3次元表示する方法など、3次元画像処理の例が示されている。また、3次元画像の画質改善のための処理法についての記述と例が示されている。具体的な例として3次元CTやステレオ画像や測距などについて詳しい説明が行われている。
以上本書では、ディジタル画像処理を広範囲にわたって平易に説明されている。本書の特徴として、ディジタル画像処理を単なる数学的な画像モデルを用いて考察するのではなく、物理的に存在する画像がコンピュータで処理される形式に変換されるまでの過程が詳しく述べられ、またそれぞれの問題で現実との接点が随所に説明され、単なる数値処理ではなくたえず現実の世界を年頭に置いてディジタル画像処理を考えるべきであることを強調している。すなわち、コンピュータに画像を取り込む装置とそれを構成する素子(デバイス)の特性に関しても説明があり、コンピュータに入力するまでの問題点やその解決法も説明されている。
また、各章には重要な点の要約があり、演習問題に加えてPROJECTと称する研究課題が設定されている。読者が演習問題のみならずこの研究課題をこなすことにより、より深い理解と認識が得られるようになっている。 |
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